特性を感じるエピソード(1)(結婚前編)

2021-06-04

結婚前の彼に悩まされたこと、ひっかかっていたこと

夫の「片付けられなさ」は時が経つとともにエスカレートしていったと前回書きました。
それ以外のASDやADHDの特性だと思えることも、加齢と共にやっかいさを増しているように感じます。

逆に言えば、結婚前はそこまでやっかいなことは多くありませんでした。
多くはなかったんだけど、すごく私を悩ませたことがありました。
最初にも書いたとおり、遠距離恋愛中、メールを送っても留守電にメッセージを残しても、一向に反応がないこと。

それと、私にとってそんなに大きな問題ではなかったけれど、なんとなくひっかかっていたのが次の二つ。
・会話のキャッチボールが下手(話が飛ぶ)
・(自分にとって興味のない)彼女の希望をスルーする

それぞれ、当時の彼がどんなふうだったか思い出しながら、大人の発達障害というものを知った今だからできる解釈を加えてみたいと思います。

1.遠距離恋愛中の彼女からのメールを無視するのはなぜ?

付き合い始めて一年経たないくらいの頃、彼の転勤が決まりました。
地方から都会への転勤です。
二人の間が盛り上がっていたときですから、「私もいずれはそっちに行くからね」と約束しました。

彼は出発の数日前、私とふたりでいるときに涙を見せました。
特に言葉はなく、ただしゃくりあげて泣いているのです。

普段は感情的ではない彼のその様子には、すごく驚きました。
今思えば、このときのことが後々まで私の判断に影響したのです。

離れている間、向こうからは全く連絡してこないし、たまたま電話したときに気づいて出てくれれば少し話すけれど、私がメールしても留守電にメッセージを入れてもほぼ返信がない。
どうして私のことをそんなに無視するのか、本当に不思議でした。

「私のことはどうでもよくなった?」と思うけれど、1〜2ヶ月に1度会うと、彼は優しくしてくれ、楽しい時間が過ごせました。

普通、そんな状況なら浮気を疑うところかもしれません。
でも、彼の場合は恋愛にガツガツした感じはまったくなく、複数の人と付き合おうという欲望も器用さもなさそうなんですよね……。

ずっと「どうして?」と混乱していたのですが、遠距離になる前に彼が泣いたことが、「私を思ってくれているはずだ」と信じる原動力になりました。

でもねぇ……。結婚後も一番の悩みのタネは、彼のこの特性だった。まだ恋愛関係のときに「こんな付き合い方はおかしい」とスパッと別れてしまえば、こんなことにならなかったのになぁ、なんて思います。

当時は全く意味不明だった彼の行動ですが、今考えれば、
・(彼女であっても)眼の前にないものには、意識が向きにくい
(メールなどが届いても)今やっていること、考えていることから他のことに気持ちを切り替えられず、後回しにしてしまう(そしてそのまま返信するのを忘れる)
というASD的な特性だったのでしょう。

目の前にいない彼女の存在感は彼の中でどんどん薄れていき、もはや「面倒くさい」としか思えなくなって、本当に連絡も取れなくなって自然消滅……ということもあり得ると思います。

だけど彼の場合は、会えば「近いうちに結婚しよう」なんて言っていた。それは、付き合い始めて1〜2年で、それなりに私への興味が持続していたこと、彼の中で「このくらいの歳になれば、恋愛のゴールは結婚だ。そこまで行かなきゃ」という思い込みのようなものがあったからなんじゃないかな、と思っています。

2.話が飛ぶのはどうして?

私達は社会人になってからの友人グループの中で出会いました。

みんなでおしゃべりをしているとき、彼は会話の流れとは関係のないようなことを口にすることが多かったです。

他の人が投げた球をスルーし、彼からは他の人が受け止めにくい球を投げ……、という感じで会話のキャッチボールできていない。

なぜそうなるのかというと、
・話の流れよりも、話の中の特定のキーワードに注目してしまう(→キーワードに触発されて別のことを考え始めてしまう)
・相手の状態を想像するのが苦手→伝わるかどうかを気にせずに自分が考えていることを話してしまう
といった特性が色濃く出ていたのだと思います。

例えば、みんなが最近話題になっているインドカレーのお店の話をしているときに、彼は突然「この間、○○の映画館に行ったんだよね」と言い出して、みんなは「???」となる。

他愛ない会話だったから大きな問題にはならず、周りの反応は「ちょっと不思議なやつ」「天然」みたいな感じで済んでいました。

こういうとき、私は彼の思考のプロセスが分かってしまうことが多く、それが彼に興味を持つきっかけになりました。

たぶん育った環境とか経験してきたことが似ていて、あるキーワードから何を連想するか、というところが似ていたんだと思います。

上の例だと、私も頭の中では「インドカレー→インド→インド映画→いまインド映画を上映している○○の映画館」という風に連想が広がっていて、「彼も同じようなことを考えていたんだな」なんて面白く思うことがありました。

ただ、私なら連想しても黙っているか、どうしても映画館の話をしたければ、他の人にもわかるように連想した過程を説明します。当時は「大人の発達障害」なんて知らなかったけれど、「彼は、話している相手の状況を想像するのが苦手なんだな。相手に通じるかどうかは考えず、自分の思ったことを口に出しちゃうんだな」とは感じていました。

あの頃は、「でも、私にはわかるからいいや」と思っていたんです。それも、甘かったな〜。
結婚後はこれが、「こちらのことを全く察してくれない」「思いやってくれない(ように見える)」につながり、私でも彼が何を考えているか全然わからないことが増え、つらい状況を生み出したのです

3.彼女の希望をスルーするのはどうして?

話が飛ぶ例として「インドカレー屋→映画館」というのを挙げましたが、あくまで例です。彼が映画が好きだったわけではありません。

映画が好きなのは私の方で、彼と付き合うまではデートのプランに映画は欠かせない選択肢でした。

だから、彼と付き合い始めてからも「この映画面白そうじゃない?」「こんど、これ観に行こうよ」みたいなことをしょっちゅう言っていたのですが、とっても反応が薄いんですよね……。

彼があまり映画に興味がないことは分かってきたので、無理強いはしませんでした。でも、「私がこんなに『行きたい!』『映画が好き』って言ってるんだから、たまには『映画行こうか」と言ってくれてもいいんじゃない?」と思ってました。

私の方は、彼が「行きたい」と言うところは、もともとは興味がないところでも「彼が好きなところなら面白いかもしれない」と付き合っていたので、不平等のようにも感じていました。

彼女を喜ばせようという気持ちがないように見えるのも、それまでの恋愛では経験がなかったことで、とっても不思議でした。

今なら、次のような特性のためにそうなるんだろうと解釈します。

・相手が自分に合わせてくれているという気遣いに気づいていない。
(指摘されるなどして気づいたとしても、「別に合わせてくれなくていい」と考え、相手が合わせてくれたから自分も…とは考えないと思います)
・興味のないことには、全くやる気が起きない。

私が映画好きなことは分かっていたけれど、「行きたければ勝手に行けばいい」というスタンスだったんでしょうね。
「行こうよ」と誘ってもいたので、「彼女の申し出を断って悪いな」という気持ちも多少あったかもしれません。でもそれ以上に、「興味のないことはできない」が大きかったのだと思います。

まだ恋愛が盛り上がっていた頃だから、「彼女を喜ばせよう」という気持ちがないわけじゃないんです。

誕生日やクリスマスにはアクセサリーをプレゼントしてくれたりしました。
でも、私はアクセサリーが欲しいと言ったことは一度もありません。「女の子はアクセサリーをプレゼントされたら喜ぶだろう」という一般論からのチョイスだったんだと思います。

彼の中には「彼女が望んでいることをしてあげよう」という思考がなかったんだなぁ、と今になってわかるのです。

※夫は、私から見て発達障害の特性に当てはまるものを多く持っているというだけで、医師の診断を受けたわけではありません。義母は特に疑問を持たずに育ててきたようですし、普通に就職して働いているので、検査しても診断は下りないかもしれません。

私は、今のところ夫が「発達障害かどうか」はあまり気にしていません。ただ、発達障害のことを知ってから、それに特性に近い個性や性質を持っている夫のことを以前よりは理解できるようになったと感じています。そんな私の視点で過去を振り返ったり、今現在の別居という形での夫婦のあり方の模索の様子をお伝えすることが、同じような悩みを抱いている方のお役に立てればと考えています。

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