特性を感じるエピソード(2)(結婚直後)
恋愛中はとにかく連絡が取れないことが悩みのタネで、それ以外はあまり大きな問題ではなかったと書きました(詳しくはこちら)。
でも結婚したとたん、違和感や悩みが増えました。
ここでは、新婚時代のことを思い出してみます。
1.やりたい気持ちはあって、こだわるけれど、手がつかず締切が守れない
私達は、入籍はしたもののまだ同居していない時期に、結婚式の準備を進めました。
結婚式に関心のない男性もいると思いますが、夫は興味をもっていた方で、ふたりでいくつかの会場見学に行って場所を決めるまでは、デート感覚で楽しかったです。
ところが、細々とした準備の段階になると、私だけがやっていることが増えていきました。
当時はレストランウェディングが流行っていて、私達が決めたのもそういうところ。料理や装花やドレスなどは選択肢が限られているものの、式の進行はかなり柔軟に希望を聞いてくれ、招待状や席札などのペーパーアイテム、BGMなどは「ご自身で準備したければ、ご自由にどうぞ!」という感じでした。
私は「素敵なウェディングにしたい」という思いはあったけれど、仕事も忙しかったし新生活の準備もあるしで、あまり手間をかけたくありませんでした。ペーパーアイテムなんかは既成品でいいと思っていました。
でも、彼の方は「せっかくだから、好きなデザインで作ろうよ」というノリ。BGMも「自分たちで決められるなんて、いいね!」という感じでした。
「あなたがそう言うなら」という感じで、そこは自分達でやることにしたのですが、結局手を動かすのは私……。
全部任せてくれればまだいいけれど、「招待状、こんな感じでどうかな?」と見せると、「うーん、なんかここが、ちょっと気になる……」みたいなダメ出しが出る。BGMの選曲も同様でした。
当時は遠距離ではなくなっていたので、週末に会うタイミングでそういうやり取りをしていました。招待状を発送したり、自分たちで決めたことを会場に伝えたりといった期日は迫ってくるのですが、夫はダメ出しするばかりで、「じゃあ、あなたがいいと思う曲を選んできてよ」と言ってもレスポンスはない。
当時は「結婚式の準備って、夫婦の最初の試練だな。ここを乗り越えて絆が固くなるんだわ」なんて超ポジティブに考えようとしていた私ですが……、振り返ってみれば、「こだわりの強さ」「見通しを立てるのが苦手」「気持ちを切り替えてやるべきことをやるのが苦手」という夫の性格に初めて振り回されたのが、このときでした。
夫は多分、ウェディングプランナーさんとの最初の打ち合わせのときに、「手作りのペーパーアイテムや自分たちで選んだBGMで素敵な結婚式」のイメージがぼんやりと浮かんで、「それを実現する」というこだわりが生まれたのだと思います。
でも、実現するためにかかる手間や段取りの見通しはなかった。だから締め切りを気にせずにダメ出しをするわけです。
そして、私に「来週までにやって」と言われたことも、他のあれこれに気を取られて気持ちを切り替えられず、ズルズルと先延ばしにしていたんだと思います。
2.朝起きない。昼間もソファでごろごろ。

新居にふたりで暮らすようになって一番びっくりしたのは、とにかく朝の寝起きが悪いことでした。
私は「会社があるんだから起こさなきゃ!」という義務感で、最初は揺すぶったり手を引っ張って上体を起こそうとしたり、なんとか夫を布団から引き剥がそうとしました。でも、夫は「分かったよ!」「ほっといて!」と怒気を含んだ声を発するばかりで全く起きない……。
それまで、私がイライラしたり文句を言ったりしても彼が怒るということはなく、ケンカになることがありませんでした。だから、朝起こそうとしたときの不機嫌さには本当に驚きました。
私は早々に「起こすのは無理」と悟り、朝ごはんを用意するだけして、自分は仕事に遅れないように先に家を出るようになりました。
もうひとつ、夫が隙きあらばソファで寝るのもストレスでした。
夕食後にダラダラと夜ふかししてソファの上で寝入ってしまう。起こそうとすると、これまた不機嫌な反応が返ってくるばかりで身体は動かない。休みの日も暇さえあればソファで寝ている。当時の私は、「そんなふうにメチャクチャな生活をしてるから、朝起きられないんだよ」と思ってました。
これは本当に最近になって理解できてきたことですが、夫は寝ても寝ても寝たりないほど、常に疲れているんですよね。いろいろと人とは違う特性を持ちながらも「普通の人」として普通の会社で働くのは、ものすごく大変なことなんだと思います。
週末の昼間にソファで寝ているのも、今思えばどこかに出かけた後だったりします。ちょっとスーパーに買物に行っただけでも、私なんかには想像できないくらい疲労するのでしょう。だから、帰宅するなりソファに倒れ込む。
以前の私には本当に不可解で、夫はひどい怠け者だと思っていました。でも今は、「大変だなぁ。かわいそうだなぁ」と感じるようになりました。

3.「出かける」と言ってから実際に出発するまでに30分〜1時間!?
一緒に暮らすようになって初めて気づいた夫の不思議な習性。もうひとつは「出かけようかな」と言ってから実際に家を出ていくまでに、30分から1時間くらいはかかるということです。
ふたりで「この日は○○に買い物に行こう」みたいな話をしていた当日、夫が「じゃあ、行くか」と言えば、私はなにか不都合がない限りはすぐに外出の用意をしていました。メイクを直し、財布などをかばんに入れて、上着を出してきて…、「おまたせ〜」とリビングに戻ると、彼は全く準備をしている様子もなく本を読んでいたりする。
男性だから出かける準備も何もないのかもしれませんが、「行こうか」と声をかけると「え!? うーん、ちょっと待って」という気のない返事が返ってくるのです。さっき「行くか」と言ったのはそっちなのに、わけが分かりません。
わけがわからないながらも、「彼は『出かける』と言ってからすぐに出かけることはない」というパターンを覚え、私なりにタイミングを図るようになりました。
今は、今気を取られていることから次のことに気持ちを切り替えるのにすご〜く時間がかかるというASD的な特性のせいだと解釈しています。「行かなきゃ」と思うから自分に掛け声はかけるものの、身体がついていかないんでしょうね……。
以前に、自治体の発達障害者支援センターというところに、私一人で夫のことを相談しに行ったことがあるのですが、このエピソードを話すと「そうそう、次の行動に移るスイッチが入るのに、ものすごく時間がかかるみたいよ〜」と言われました。「あぁ、よくあることなんだ〜」と納得した次第です。
※夫は、私から見て発達障害の特性に当てはまるものを多く持っているというだけで、医師の診断を受けたわけではありません。義母は特に疑問を持たずに育ててきたようですし、普通に就職して働いているので、検査しても診断は下りないかもしれません。
私は、今のところ夫が「発達障害かどうか」はあまり気にしていません。ただ、発達障害のことを知ってから、それに特性に近い個性や性質を持っている夫のことを以前よりは理解できるようになったと感じています。そんな私の視点で過去を振り返ったり、今現在の別居という形での夫婦のあり方の模索の様子をお伝えすることが、同じような悩みを抱いている方のお役に立てればと考えています。