特性を感じるエピソード(3)(単身赴任中)

2021-07-08

結婚して何年か経ったとき、夫が単身赴任をしました。

1年間限定ということが分かっていたし私も仕事をしていたので、一緒に行くかどうかと迷うこともなく、「行ってらっしゃ〜い」と送り出しました。

結婚前に遠距離恋愛が始まるときは涙を流していた夫(こちらの遠距離恋愛のエピソード参照)ですが、あっさりしたものでした。

今振り返ってみれば、夫は単身赴任先での仕事にとても面白みを感じていて、妻と離れてひとりで仕事に没頭できるのは好都合だったんだと思います。

この頃には、結婚後に見えてきた夫の一面や不思議な習性も、パターンを掴んで対処したり気にしないようにしたりできるようになっていた私。でも、単身赴任という新たなシチュエーションでは、また振り回されることになりました。

「どうして返信してくれないの??」が再び

新たな困りごとというよりも、「そうそう、こういう人だったね……」と再認識したのが、「とにかく連絡が取れない」問題。遠距離恋愛中もそうでした。

もう、「好き」だの「会いたい」だのをしょっちゅう言い合いたいというわけではなかったのですが、夫が元気なのかどうかは気になるし、会社からは月一回くらいは帰宅するということだったので、それがいつなのか予定も知りたい。
その程度のことが、全然分からなくてやきもきしました。

当時のメールを検索してみたのですが、私がこんな感じのメールを何度も送っていて、夫からの返信は一切ないんです……。(まだLINEのような連絡ツールがなくてメールやショートメッセージなんかで連絡していた頃です)

調子はどうですかー?
メールの返事がないし、電話しても出ないので、倒れてるんじゃないかと心配してるよ。
来週末は帰ってくるのかな?

なんだかすごく優しい文面ですが、これにも理由があります。

私が怒ったり悲しんだりしてみせても全然通じないどころか、かえって殻に閉じこもってしまってますますコミュニケーションが取りづらくなるーーそんな夫の性格が、この頃には分かっていました。
ちょっとでも「責められている」と感じるとフリーズしてしまう。これも、今思えばASDっぽさが表れているところだったんだと思います。「なんで怒られているのか分からない」「怒っている相手に対して、どう反応したらいいか分からない」で思考停止してしまうんですね(どう反応したらいいもなにも、単純に「聞いてることに答えてくれ」というだけなんですけど…)。

だからメールでも「なんで連絡くれないのっ!」みたいなことを書いたら逆効果だと思って、ひたすら明るく問いかけるようなメールを送っていたんです。でも、返信がないのは結局同じでした。

あまりにも無視されるので、少し浮気を疑ったりもしました。でも、一時帰宅などで夫に会うと、別に私との関係を終わらせたがっているようにも見えないし、遊びで浮気をするような器用なことをしているようにも見えません。

遠距離恋愛中と同じく、「どうして??」と困惑するばかりでしたが、今思えば、単身赴任先での仕事に常に気を取られていて、私からのメールは見ても後回し→そのまま忘れる、という単純な話だったんだろうと思います。

久しぶりのデートは過酷なツーリング??

一度だけ夫の単身赴任先に遊びに行ったことがあります。夏季休暇中の、とても暑いときでした。

夫は1DKの部屋を借りていて、行ってみるとそれなりに片付いていました。当時の私はそれが普段の状態だと受け止めたのですが(まだ夫の「片付けられなさ」がエスカレートする前でした)、私が行くからがんばって片付けたのかもしれません。単身赴任が始まって数ヶ月で、まだそんなに荷物が増えていなかった、というのもあったのでしょう。

滞在中、夫は自分の職場やよくランチに行く喫茶店などを案内してくれ、さらに少し遠出して繁華街まで連れて行ってくれました。

これだけなら、初めてその土地に来た妻を楽しませようとする良い夫、という感じですが、問題は交通手段です。

夫は自転車で職場まで通っていて、そのときは職場までは二人乗りで行きました。そして職場についたら同僚の自転車を借り、私にそれを使うように言ったのです。

最初は「自転車で軽く行ける位の距離なのかな」と、あまり疑問に思わずに出発したのですが、予想以上の長距離! しかも彼のペースが速い!
炎天下で汗ダクだし、お尻は痛くなるしで、なんかもう……最悪な気分でした。

そういうデートっぽいことは久しぶりだったのですが、そういえば彼は、二人で歩いていても自分が車道側に立つとか、ドアを開けてあげるとか、荷物を持ってあげるとか、女性を気遣うような行動を一切しない人でした。

私は、重くもないバッグを持ってくれるような意味のない気遣いは不要と考えるタイプです。彼もそういうタイプなんだと昔は思っていました。ただ、私の体力をちょっと多めに見積もっているから、あまり手助けをしてくれないんだと……。

でも、自転車で走り回らされたこの経験を経て、彼は「相手が気遣いを必要としているか」を考えた上で「必要ない」と判断しているわけではなく、単に何にも考えていないんだと分かりました。発達障害の特性のひとつに「自他境界のあいまいさ」「相手の立場に立って考えることが苦手」がありますが、夫もそういうところがあって、自分ができることは相手もできると思っちゃう、相手の大変さを想像できないわけですね。

これには妊娠中にも寂しい思いをさせられました。お腹が大きくていつもみたいには歩けないのに、一人さっさと先に行ってしまう。「しんどいからゆっくり歩いて」と言えば、少しの間は歩調をゆるめてくれるのですが、すぐに忘れて行ってしまいます。「あんなにお腹が大きかったら、普通に歩くのも大変だろう」という相手の立場に立った想像が自然にはできないんだと思います。一度言って分かってくれればいいのですが、すぐに忘れちゃうのも、こういうタイプの人たちの「あるある」みたいですね。

※夫は、私から見て発達障害の特性に当てはまるものを多く持っているというだけで、医師の診断を受けたわけではありません。義母は特に疑問を持たずに育ててきたようですし、普通に就職して働いているので、検査しても診断は下りないかもしれません。

私は、今のところ夫が「発達障害かどうか」はあまり気にしていません。ただ、発達障害のことを知ってから、それに特性に近い個性や性質を持っている夫のことを以前よりは理解できるようになったと感じています。そんな私の視点で過去を振り返ったり、今現在の別居という形での夫婦のあり方の模索の様子をお伝えすることが、同じような悩みを抱いている方のお役に立てればと考えています。

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