特性を感じるエピソード(6)(妊娠中)

過去を振り返り、「そういえば、夫のあの行動は大人の発達障害の特性だったのかな?」と思えることを書いてきました。

特性を感じるエピソード(1)(結婚前編)
特性を感じるエピソード(2)(結婚直後
特性を感じるエピソード(3)(単身赴任中)
特性を感じるエピソード(4)(初めてのケンカ?)
特性を感じるエピソード(5)(妊活中)

前回記事に書いたとおり、私たち夫婦はなかなか子どもができず、不妊治療を経て結婚9年目にやっと妊娠しました。

不妊治療には非協力的に見えた夫でしたが、私の妊娠は喜んでくれました。ただ、悪阻とかお腹が大きくなって行動に不自由のある感じとか、自分の体験したことのない状況に直面している妻をどうサポートしたら良いのか分からず、とてもオロオロしている感じでした

ましてや、まだお腹も膨らんでいなくて悪阻もそんなにないときは、妻がいつもと違う状況であるということがなかなか想像できなかったようです

とまどいつつも断れなかった妊娠初期のハイキング

今でもよく思い出すのが、妊娠3ヶ月目くらいに夫と旅行に行ったときのことです。

たしか、「お腹が大きくなったら気軽に泊りがけの旅行も生きづらくなるし…」みたいな話をして、初夏の週末に、車で2時間くらいの高原のホテルに1泊しました。

夫は旅好きで、車で色々なところに出かけては、その土地の名所や秘境などをアクティブにはしごします。でも、そのときの私は「妊婦を連れてるんだし、緑に囲まれた静かなホテルだし、今回はここでゆっくり過ごすんだろう」と思っていました。

夫も行く前は「のんびり過ごそう」なんて話していたように思うのですが、到着したホテルのロビーで周辺のハイキングコースの地図を見つけると、「これに行こう!」とアクティブモードに切り替わってしまいました。

ハイキングコースはいくつかあって、それぞれ距離や所要時間が書かれています。夫が選んだのは、1時間半ほどかかる渓谷沿いのコースでした。

「えー、これ、結構アップダウン激しいんじゃないかな。滑ったりしないか心配…」と言ったのですが、夫は「大丈夫でしょ」と言うばかり。

私は「妊娠初期でまだ安定期に入っていないのに、何かあったら…」と不安だったのですが、夫にはそれが伝わらなかったようです。

今思えば、私は自分で判断すべきことを夫に頼りすぎていたな〜と思うのですが、当時の私は「地図を読むのは夫の方が得意」「妊娠初期が大事な時期であることは夫も分かっている」「その夫が大丈夫と言っているんだから大丈夫だろう」という考え方をしていたんです。

で、実際に行ってみたそのコースは、大きな岩を登ったり降りたりのなかなかにキツイもので、途中でヒヤッとすることもありました。

それでも私は、「彼が大丈夫だというのだから、危険というわけではないのだろう。ここで足を滑らせたら、それは私が相当どんくさいということなんだろう」なんて思ってました。私をいたわってくれない夫にムカついてはいましたが、彼の安全を判断する能力には疑問をもっていなかったんですよね。

今思えば、夫は全然何も分かってなかったんだと思います。「妊娠初期は大事な時期である」ということはどこかで話をして、知識としては知っていた。だからといって、「滑ったり転んだりする危険のあることをさせるべきではない」ということとは結びつかないんですよね。で、妻が気が進まない様子でいても、相手の気持ちを想像することができず、「せっかく旅行に来たんだから、面白いことして帰りたい」という自分の欲求を優先させていたのです。(炎天下に自転車で走り回る羽目になった単身赴任先でのエピソードを思い出します…)

今の私だったら、「じゃあ、一人で行っておいで」って言いますけどね…。

「イクメンになること」に興味を集中させていた夫、安心しきった私

そんなモヤッとする妊娠初期を経て、私のお腹が少し目立つようになった頃から、夫はいわゆる「イクメンのススメ」的な本を読んだり、講座に行ったりするようになりました。

知人にまさにイクメンな人がいて、良いパパ、良い夫の役割をどのように果たしているのか、本人のお話を聞く機会があったことにも刺激を受けたようです。

さらには、その頃はたまたま夫が希望しない部署に異動し、仕事に面白みを感じられない状態だったことも大きかったと思います。

よく、ASDには「興味の偏り」「興味の対象が限定されている」という特徴があると言われます。

夫も、同時にいくつものものに興味を持つことができず、少数の対象に深くハマります。また、興味を持っていること以外はどうしてもやる気が起きず、適当に対処することもできなくて、とにかく後回しにするという傾向があります。

もしその頃の夫が仕事に興味を集中させていたら、状況は全然違っていたかもしれませんが、私の妊娠中から出産後1年くらいの間、彼は「イクメンになること」に興味を集中させていたのだと思うのです。

その証拠に、子どもが生まれた直後、短い期間ではありましたがまだ会社ではほとんど前例のなかった育休も取ったし、朝起きるのが苦手なのに、私が布団の中で授乳している間に朝ごはんを作ってくれるようになりました。

朝起きられなかったのに起きられるようになった、家事や子どもの世話も以前の彼だったら考えられないほどやってくれている。そんな夫を見て、私はすっかり安心しました。子どもができたから彼も変わったんだ! 世間には「ワンオペ辛い」って言っているお母さんもいっぱいいるのに、私ってラッキーだな! なんて思っていたのです。

「私の夫はイクメン。なんてありがたいことだ」という思いは、最初こそ間違っていなかったはずですが、数年経ってから私を苦しめるようになりました。

※夫は、私から見て発達障害の特性に当てはまるものを多く持っているというだけで、医師の診断を受けたわけではありません。義母は特に疑問を持たずに育ててきたようですし、普通に就職して働いているので、検査しても診断は下りないかもしれません。

私は、今のところ夫が「発達障害かどうか」はあまり気にしていません。ただ、発達障害のことを知ってから、それに特性に近い個性や性質を持っている夫のことを以前よりは理解できるようになったと感じています。そんな私の視点で過去を振り返ったり、今現在の別居という形での夫婦のあり方の模索の様子をお伝えすることが、同じような悩みを抱いている方のお役に立てればと考えています。

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