特性を感じるエピソード(7)(子育て〜乳児期とその後)
前回の記事で書き忘れましたが、夫は妊婦を気遣えないんだなぁというのは妊娠初期だけでなくお腹が大きくなってもたびたび感じました。
私は早足でサッサと歩く方なのですが、お腹が大きくなってくるとそういうわけにもいきませんでした。で、夫と一緒に買物に行ったりすると、夫がどんどん先に行ってしまう。私がついてきているかどうかも全く気にせず行ってしまう。
結果、横断歩道の向こうとこちらに分かれてしまうこともあるくらいでした。
これって、子どもが生まれてからも変わらず、私が子どもと手をつないで歩いていても、夫はどんどん先に行ってしまうんですよね…。
子どものペースや気分に合わせられない夫
子どもが生まれて少し大きくなってから、「彼は人に合わせるのが本当に苦手なんだなぁ」ということをさらにハッキリ感じるようになりました。
単身赴任中のエピソードのところに書いたとおり、女性の荷物をもってあげるとか、車道の側を歩くとか、女性に対するよくある気遣いみたいなことをしない人だとは思っていたのだけれど、それって、私がしっかりしていてそういうことをする必要がないと、彼が判断してのことだと思っていたんですよね。
だけど、小さい子どもに対しても、その子のペースや気持ちに合わせてあげるとか、安全に配慮するような行動がとても少ないのを見ると、別に敢えて気遣いを見せなかったわけではなく、「相手に合わせたり配慮したりする必要性に気づいてない」ということなんだろうな、と思えてきました(「大人の発達障害」の可能性を考えるようになってからは、それが確信に変わりました)。
だから、子どもの足では追いつけないペースでどんどん歩いていっちゃうし、子どもが「遊んで〜」とか「一緒にお風呂入ろ〜」とか言っても、自分の気分次第で断る。
3人家族ですから、夫が断ったら私が相手するしかないわけです。夫は普段から家にいる時間が少なくて、遊んだりお風呂に入れたりするのは圧倒的に私の方が多いのだから、たまに家にいるときに、しかも子どもの方から誘っているときに断るってどうなのよ! と思うんですが……。
子どもの気持ちも私の気持ちも想像することができず、自分が今やっていることを中断して他の行動に移るのがとても苦手なところ、とってもASDっぽいのではないかと思います。
うまくいっていた乳児期

それでも、子どもがまだ乳児のときは、イクメンと言っても良いような夫だったんです。
前記事で書いたとおり、生まれる前から本を読んだり講座に行ったりして父親としてやるべきことを学び、生まれてからは短い期間ながらも育休を取り、朝が苦手なのに頑張って起きて朝食を作るのが習慣になりました。
夜中は子どもがどれだけ泣いても全然起きませんでしたが(←これもおそらく、いくら寝ても寝たりない、起こされて起きるのが苦手という特性)、昼間はがんばって抱っこし、ミルクやおむつ替えもやってくれました。
今思えば、この頃の夫は「イクメンになる」ということに自分の興味を集中させ、新しい生活習慣を身につけることができたのだと思います。
これは、当時は会社の仕事があまり面白くなかったことが大きかったのでしょう。その後、転職して仕事に熱中するようになると、だんだんと家のこと、子どものことができなくなっていきました。
また、子どもが乳児のうちは、子どもの意志は「お腹すいた」「おむつが気持ち悪い」「抱っこしてほしい」「眠い」くらいしかありません。
夫は今でも、その頃のことを懐かしそうに言うんです。「◯◯が泣いたら、ミルクかな、おむつかなって、順番に試して泣いてる理由を確かめていったんだよ」って。
子どもが何を希望しているのか、いくつかの理由を考えてみれば対応できたわけで、他人の気持ちを想像するのが苦手な夫にも、それくらいなら対応できたんだな、と思います。

夫はイクメン、という思い込みと現実のギャップに苦しんだ
出産前後の夫の様子を見て、私は「うちの夫はイクメンで良かった♪」と思い、その後もずっとイクメンでいてくれるものと思い込んでしましました。
でも夫が転職し、子どもが大きくなるにつれ、その思い込みと現実の夫の行動との間にギャップが出てきました。それでも私は、思い込みをはずせず、「なんだかおかしいな、夫、イクメンのはずなのに」とモヤモヤし続けることになるのです。
転職前はなるべく早く帰って赤ちゃんをお風呂に入れてくれようとしていた夫が、転職後は残業ばかり、時には会社に泊まってくるようになりました。
それでも、(会社に泊まった日は別として)ずっと朝食は作り続けてくれたし、休みの日に「私は出かけるから子どもを見ていてね」と頼めば特に嫌がるでもなく応じてくれていたので、私はなかなか思い込みを修正できませんでした。でもこれらのことも、後から考えてみれば「ルーチンを変えるのが苦手」という夫の特性によるものだったのかな、と思います。
夫は朝食当番をずっとやってくれていたのですが、朝起きる時間はだんだんと遅くなっていきました。そのため、子どもが生まれた直後は必要なかった「夫を起こす」というのが私のタスクになりました。起こさないと朝ごはんが食べられないのです。
どんどん寝起きが悪くなり、起こす作業も大変になっていくなか、ある日、遅刻ギリギリなのに定番メニューの玉子焼きをいつもと同じ手順で作ろうとする夫に、思わず「今日みたいに時間のない日まで、それ作らなくていいでしょ。すぐにできるものだけでいいよ!」とキツめに言ってしまいました。
夫から朝食当番の役目を取り上げたらもっと起きなくなるのだろうなと思い、その後しばらくは作り続けてもらったのですが、朝の忙しい時間に「いつ起きるの?」「いつ朝ごはんできるの?」とヤキモキすることに耐えられなくなり、私の方から「もう、私が朝ごはん作るよ」と言い渡してしまいました。それ以来、夫はギリギリまで布団の中。他の家事もほとんどしなくなりました。
その頃、私は夫が「大人の発達障害」である可能性を考えるようになり、やっと「もはや今の夫はイクメンなんかじゃない」と気づいたのでした。
気づいてしまうと、「(イクメンの夫なら)これくらいやってくれるはずなのに」という見当違いな期待をしなくなり、「なんでやってくれないの」というイライラや「おかしいな?」という違和感を持つことがなくなり、かなりスッキリしました。
けれど同時に、夫の私と子どもへの愛情に、疑問をもつようになりました。「イクメン=妻子を大事にする夫」という思い込みから、敢えて目をそらしていたのですが、うちの夫、なんだか異常に私と子どもに無関心だな……と感じるようになったのです。
※夫は、私から見て発達障害の特性に当てはまるものを多く持っているというだけで、医師の診断を受けたわけではありません。義母は特に疑問を持たずに育ててきたようですし、普通に就職して働いているので、検査しても診断は下りないかもしれません。
私は、今のところ夫が「発達障害かどうか」はあまり気にしていません。ただ、発達障害のことを知ってから、それに特性に近い個性や性質を持っている夫のことを以前よりは理解できるようになったと感じています。そんな私の視点で過去を振り返ったり、今現在の別居という形での夫婦のあり方の模索の様子をお伝えすることが、同じような悩みを抱いている方のお役に立てればと考えています。